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生産者紹介

【花巻市葛】 阿部貴広さん

ミニトマト生産者

花巻市農村青年クラブ

4つのビニールハウス
曇り空と雨の中、静かな農園地帯を進む。すこし狭い農道の先に4つのビニールハウスが見える。ここが今回の取材先、阿部貴広さんのミニトマト栽培用のハウスだ。
「どーもー、ここでーす!」
阿部さんの朗らかな声がハウスの中から聞こえる。今はちょうどミニトマトの収穫時期。収穫で忙しい合間を縫って取材に応えてくれた。
調理師から農家へ
阿部さんは埼玉から花巻へやって来た。奥様の実家が花巻で農家をしており、婿入りを機に農業の道へ入った。
「埼玉では調理師をしていたので、最初は調理の仕事を探しました。」
 しかし埼玉と花巻では調理師の給与に差があった。埼玉にいたときと同じくらいの収入を得たいと思った阿部さんは、自分で努力しただけ収入を増やせる農業に惹かれ、本格的に就農を決意、実家の農家を継いだ。
 食材を扱う調理師としてはプロでも、農産物をつくるのは初心者。就農研修や講習会へ積極的に参加し、貪欲に学んでいった。
「自分が大事にしたのは講習内容よりも、参加している人たちとの会話や情報交換でした。いろいろ教えてもらえるので今も講習会には出るようにしています。」
 講習会への参加と並行して、勉強する仲間をつくれる場所も探した。そこで出会ったのが4Hクラブ(農業青年クラブ)だった。今もクラブのメンバーと意見交換を行い、学び続けている。
ミニトマトづくり
ハウスの中を見せてくれた。ミニトマト用のハウスは全部で4棟。広さは約8アールあり、年間の収穫量4.2トン程度を目標にしている。ミニトマトの枝はハウスいっぱいに広がっている。目を引くのはミニトマトの色の違いだ。赤いルビーのような実もあれば、少しくすみのある実や、まだ緑のものもある。
「くすんでいるのは甘いけど皮が固いです。赤も緑も糖度を測れば、どっちも同じくらいですが、赤くなると酸味が抜けて美味しくなります。」色の違いによる味の違いを阿部さんが教えてくれた。
つくっている品種はキャロルスターという1種類だけ。「今までいろいろな品種を試しましたが、これが一番自分に合っています。」と阿部さん。
病気に強く、農薬が少なくすんで、それなりに収量もとれ、手間があまりかからない。ミニトマト以外に水稲やしいたけ等、多品目を手掛けている阿部さんにはぴったりの品種だった。
ミニトマトの成長に必要なのは定期的な水やり、そして液肥である。ミニトマト1株あたり1日に1.5から2リットルの水が必要だ。幸い阿部さんの実家には井戸水があり、水を切らすことなく与えることができる。また水やりも3年前に購入した潅水設備のおかげで自動的に行うことができる。
「この機械をいれたのでハウスを増やすことができました。」潅水設備の購入も日々の情報収集を怠らなかった成果だ。

自宅へ移動した。ハウスから徒歩で2分ほどの距離だ。自宅横の作業場では阿部さんの奥さんとお義母さんが別の農作業中であった。
阿部さんが見せてくれたのは、ミニトマトの仕分けの機械。ミニトマトは出荷規格ごとに仕分けしなければならない。仕分けの機械を使うことで、自動的に実の選別を行う。積極的に機械設備をいれることで効率的な経営を行っている。
今後のこと
今後もハウスを増やす予定はあるのだろうか?阿部さんは安易な拡大経営には反対する。
「ハウス1つ増やすのにとてもお金がかかる。今の規模が自分一人でできる限界ですね。ちょっと増やすくらいだと、人を雇わないといけないけど、そうすると儲からない。拡大するなら一気に今の倍くらいの規模にするくらいでないと。」

阿部さんの柔らかな人柄のお陰か、静かでのんびりとした農園のお陰か、時間を忘れ気づけばインタビューは1時間を越えていた。阿部さんのハウスではミニトマトの収穫体験も行っている。次に来るときは、もっとゆったり時間をとって穏やか農園の中で新鮮なミニトマトをいただきに伺おう。