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生産者紹介

【花巻市葛】 阿部貴広さん

しいたけ生産者

花巻市農村青年クラブ

見えないものとのたたかい
しいたけハウスは3棟あり、2つが栽培と収穫、1つが培養のハウスと役割が異なる。違っている。まず栽培と収穫のハウスを見せてもらった。
ハウス内には、3列1セットになった陳列棚に菌床しいたけのブロック球が置かれており、1つ1つのブロック球からいくつもしいたけが生えている。
しいたけが発生するためには、まずはブロック球の中に芽が作られていないと出てこない。芽ができているかは外からは見えない。しいたけ栽培について阿部さんは「見えないものとのたたかい」だという。
ただし見えないけれども、調べることはできる。ハウス内にあるブロック球のひとつに温度計が刺さっている。特別な温度計で、球の中に刺さっている部分は球の内部の温度がわかり、もう一方の露出している部分は外気温がわかる。芽ができると外気より球の内部の温度があがってくる。これはしいたけ菌が活発に動いているおり、球の内部で芽ができていることを意味する。その状態でハウス内の温度を下げるなどショックを与えるとしいたけが発生する、という仕組みだ。
収穫したらハウス内の温度を今度はあげて、水をたっぷりかけ次の芽をつくり、冷やしてショックを与えて収穫する。このサイクルを15日おきに2棟のハウスで時期をずらすことで、収穫量を安定させている。
培養ハウス
次に培養ハウスを案内していただいた。しいたけのブロック球が陳列棚に整列しているのは同じだが、袋に密閉され、球の上部は白い色、下部が黒い色と分かれている。白い部分はしいたけ菌、黒い部分はおがくず。時間が経つにつれてしいたけ菌が全体に広がっていくのだそうだ。
培養の手順は次の通りだ。しいたけ菌が袋の中で広がっていくと全体が茶色に変わっていく。ブロック球から分解水という水分が出るので、それが溜まらないよう、球の向きを変え倒立させる。
茶色に変わったら袋を切り密閉を解き、乾かないように水管理を行う。球の中が24度よりあがらないようハウス内の冷房をつけて温度管理する。
ハウスの継承
これらのハウスは阿部さんがお父さまの代から使用しているものだ。かつては床に水をまき、放射冷却でハウス内を冷やしていたため、培養期間はしいたけ栽培以外のことができなかった。そこで阿部さんは近隣でいち早く冷房設備を導入し手間を減らすことで、しいたけ以外の作物の栽培もできるよう工夫した。
 また暖房についても、かつて薪を使っていたものをヒートポンプに変更することで温度管理をより適切で容易なものにした。

今回2棟のハウスを見せていただいたことで、ハウス同士がすぐ近くに建っていても生育環境が若干違うことがわかった。
例えば日照。ハウス内の明るさによってもしいたけの生育に影響がでる。暗すぎると光を求めてしいたけは軸の部分が伸びてしまい形が崩れる。明るさのバランスをとる必要があるが、これがハウスによって違うのだ。
培養ハウスは明るいので、日照を抑えるシートが張られている、というようにハウスごとの違いを考慮して、ハウスをしいたけにとって最適な環境になるよう随所に工夫を凝らしている。
 このように阿部さんはお父様から継承したハウスを細部にわたり作り直し、工夫し続けている。阿部さんがつくるしいたけは、その結晶だ。
 美しく肉厚なしいたけをいただき、阿部さんのしいたけハウスを後にした。