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生産者紹介

【花巻市石鳥谷町】 伊藤邦彦さん

なす生産者

花巻市農村青年クラブ

食べ物を自分でつくる
宮沢賢治が教鞭をとっていた花巻農業高校の近くにあるナス畑。夏空の下、立派に育ったナスが堂々とその身を揺らしている。大柄な体躯に柔和な笑顔の男性が迎えてくれた。かつて杉苗の畑であったところを自宅近くでナスの栽培を始めた。ナス農家の伊藤邦彦さんである。

 花巻の農家に生まれた伊藤さんは大学を卒業後、東京で会社勤めをしていた。都会での食べ物が岩手のものに比べ美味しくないと感じていた伊藤さんは、食べ物を自分で作りたいと考え、岩手へ戻ることを決意。自宅近くの杉苗の畑をナス畑に変えた。ナスを始めたのは農協が勧めたことと、農業の先輩である父親から一番に勧められたためだ。

 始めるのにコストが低く済んだのも選んで理由だ。ナス栽培に必要な支柱立てなどは、縁があって譲り受けることができた。また毎日の水やりも、実家にある井戸水を利用できるので水道料金がかかる心配もない。
ナスづくり
ナス畑には14本の畝があり、1つの畝におよそ40本のナスの木を植えている。そこから1シーズンでおよそ8トンの収量を目標にしている。収量を多くするには、ナスにきちんと栄養がいくようにしなければならない。「栄養をつくる葉っぱと、水分や養分をとるだけの葉っぱがあるんです。」伊藤さんは説明しながら、不要な葉っぱを切っていく。

伊藤さんは続ける。「ナス1つにつき、葉っぱは1枚くらいにすると収穫の回転が速くなります。」ナスは早く育つほど皮が薄いまま収穫できる。ナスの皮にはナスニンという老化予防に効果がある成分が多く含まれている。皮ごと食べれるナスは、健康面でも優秀というわけだ。夏の次期は、この葉っぱや枝を切る作業を延々と繰り返す。

 ところで肥料や水やりはどうしているのだろうか?この疑問に伊藤さんは自宅の裏手に案内してくれた。「水や液肥は機械でやっています。決めた時間に送ってくれます。」そこにあったのはポンプやタイマーなどがついた潅水用の設備。水や肥料は、これを使って畑までチューブで運び、チューブに空いた穴から水滴のように土へと撒かれる。好みの時間や回数を設定でき自動的に送ることができる。

 水やりは機械がやってくれるが、大変なのは収穫の作業だ。例年だと朝2時30分から3時くらいに起き出荷作業、朝食を食べ、10時過ぎから昼頃まで仕事をし、昼食を食べ、13時30頃から夕方まで手入れや収穫を繰り返す。夜9時には床に就く。
野菜づくりのやりがい
 農業で忙しい毎日だが、伊藤さんは2児の父でもあり、子供たちとの時間も大切にしている。畑を遊び場にしたり、近くの森に一緒に行ったり、伊藤家の子供達は自然の中ですくすく育っている。「自分が興味ないせいか、子供たちもゲームに興味が無いみたいです。」子供達の興味はクワガタなど自然の生き物に向いている。

 今後は畑をどうしていきたいのか?「大きく広くしていく人もいるけど、自分は今の稼ぎでやっていけたらいいです。」そう伊藤さんは考えている。

 収穫した野菜の多くは農協に出荷している。しかし農協へ出荷すると、野菜がどこで販売されるかよくわからなくなってしまう。はなまき朝ごはんプロジェクトなら、花巻市内の旅館に並ぶので、どこに出しているかはっきりしている。「どこで自分の野菜が使われているか分かるだけでも、やりがいがあります。つくっていて楽しいです。」

 夏空の下、とれたてのナスをもらい畑をあとにした。