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生産者紹介

【花巻市田力】 大菅智和

しいたけ生産者

花巻市農村青年クラブ

大きな「しいたけハウス」
およそ4年ぶりに訪れた。はなまき朝ごはんプロジェクトで初期の頃からお世話になっているしいたけ農家の大菅さんのハウスである。
 肌寒い中、大菅さんは自宅の外で待ってくれていた。
「ハウスは家の裏です。」
 裏にまわると、見たこともない大きなハウスが2棟と、それより小さなハウスが1棟建っている。大きな2棟はしいたけの栽培用、小さい方は作業用のハウスだ。
 高さ4mはあろうかという巨大なハウス。これほど大きなしいたけハウスは花巻でもまれである。1年ほど前に建てたばかりというハウスは清潔で、堂々とした立派な構えだ。
 さっそく中に案内してもらうと、ハウス内はとても暖かい。ハウスの天井付近を通っているダクトが暖房の熱を運び、ハウス内の室温を24℃になるようコントロールしている。しいたけは農薬いらずの作物だ。そのため温度や湿度などの徹底した管理が肝となる。

 しいたけは菌床と呼ばれる栽培ブロックから生えてくる。大菅さんのハウスでは、2棟で13,000玉もの菌床を栽培している。一つの菌床から1kgの収穫量が目標で、達成するために様々な工夫を行っている。
「組み立てとかは全部業者に一括して頼みましたね。設計は俺したんですけど。」
 しいたけに最適な環境を整えるため、大菅さんは特注でこのハウスを建てた。先ほどのダクトも大菅さんのアイディアだ。
「高い位置にダクトをつけるためにハウス特注でおっきいやつにしたんです。天井高く。これ下にもっていくと、しいたけが乾いちゃうんで。たぶん、しいたけ農家のハウスでこんな天井高いとこ無いと思います。」
 またハウスを囲っている幕にも工夫をこらした。
「綿入りの毛布みたいなやつなんですけど。断熱効果高いんですよ。これ直接水もかけれるんで、ハウスの湿度保持したいときにも、ここの壁にパーッとかけるんですよ。ぜんぜんカビないですしね。」
このハウスは精密にコントロールされた、しいたけの巨大工場だ。
試行錯誤のしいたけづくり
しいたけづくりの工程を大菅さんに説明していただいた。
「2月3月に農協で植菌っていって袋に閉じた状態の奴を買ってきて入れて、そっから9月までこのハウスで培養して、そして袋を切って2月まで3月まで収穫。半年くらいのものです。培養の期間も半年くらいです。」
 しいたけは菌種によって一年中とれるものもあるが、大菅さんは冬の期間に集中して収穫できるものにしている。
しいたけは夏よりも冬に高く売れる作物だ。冬は鍋物への需要などがあるためである。夏場も冷房代など経費はかかる。それなら、高く売れる時期に集中して、質の良いしいたけをつくろうと考えた。
「これは冬場だけの寿命の短い菌種なので。どうしても単価あがるのってこの時期なんですよね。」

 このような精密なコントロール下でも、うまく栽培できるとは限らない。現状の収量は目標に届いていないと大菅さんは言う。
「ちょっと失敗したんですよ。菌床を固くしたんですよ。もうちょっと柔くないとだめなんですよ。」
 当初、ハウスにうまく熱がまわらず、一部の菌床が風にあたりすぎて固くなってしまった。菌床が固いと、軸が太く丈夫なしいたけしか外に出れないため収量が減ってしまう。固い菌床は水をかけて湿度をあげ、柔らかくすれば小さなものも出ることができる。
 この問題をクリアするために熱を運ぶダクトに小さな穴をあけ、まんべんなく熱がハウス内をまわるよう改善した。
 大菅さんは、まだ30代の若手農家だが、しいたけづくりをはじめて20年近くのキャリアがある。失敗から学び、今でも試行錯誤を続けている。
土かまさないのがなんか、いかったっすね。
大菅さんの実家は農家。おじいさんとおばあさんがやっていたのを引き継いだ。きゅうり等を栽培していたが冬場の収入を確保するため、しいたけ栽培に目をつけた。
「しいたけは俺が始めたんですよ。しいたけ栽培を近所の人に見せられに行ったときに。冬場やっぱり暇だっていうのがわかってたんで。」

 手探りで始めたしいたけ栽培。近隣のしいたけ農家を積極的にまわり勉強していった。経験を積み、昨年12月に自分のアイディアを詰め込んだ理想のしいたけハウスを2棟建てた。
大菅さんにとって、しいたけの魅力は何なのだろうか。
「やっぱりなんていうんですかね。土かまさないのがなんか、いかったっすね、俺的には。なんか土を見ながらっていうのが、あんまり得意じゃなかったですよね。これだったら農薬も全然使わないし。」
 野菜には人それぞれ相性がある。今まで取材した農家の多くの方が口にした言葉だ。大菅さんは、しいたけとの相性がぴったり合ったのだろう。

 この大きなハウスは、当初6棟建てる予定だったという。場所の問題などで2棟のみにとどまったが、今後増やしていくことを考えていると言う。
「しいたけ一本にしたいですね。夏も売る工夫して。」

 帰り際、大菅さんの自宅から奥様とお子様たちが見送りに出てきてくれた。
「娘ふたりの息子ひとりです。7歳5歳3歳です。」
 かわいらしい子供たちに見送られ、大菅さんのもとを後にした。