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生産者紹介

【北上市成田】 齊藤靖子さん

春キャベツ生産者

静かなハウス棟にて
国道から数キロ先へ車を走らせると閑静な農業地帯が広がっていた。さらに細い農道を進むとたくさんの細長いハウスが見えてきた。出迎えてくれたのは春キャベツ農家の齊藤 靖子さんだ。ハウスは全部で11棟。そのうち3棟で春キャベツを栽培している。1棟のハウスから約3000本の春キャベツの収穫を目標にしている。ハウスは縦に細長く天井が低い。今までに見たことのない形だ。
「50メートルハウスなんですよ。ふつうの人のは30メートルくらいなんです。」
 このハウスは齊藤さんのおじいさんとおばあさんがパイプを組み立て、シートを張って自作したものだそうだ。齊藤さんのハウスは小高い丘の上にあり、吹きさらしの風にさらされる場所にある。風に飛ばされにくいハウスにするため、天井の低いハウスにした。
 さらに雪につぶされないよう、ハウス内に補強パイプを入れ頑丈にしている。アーチ状に均一に配置されたパイプと、細長く整列した瑞々しい緑の春キャベツはとても美しく、このハウスの造りだけでも非凡なセンスが感じられる。
齊藤さんのキャベツが欲しい
齊藤さんが春キャベツを栽培し始めたのは約10年前。もともとはイチゴを手掛けていたが、イチゴは人手がかかるため収量を減らし、それに代わる作物として春キャベツに目をつけた。「YR青春」と「YR青春二号」という2つの品種を栽培している。「YR青春」は柔らかく春キャベツ用、「YR青春二号」は糖度が高い品種だ。YR系の品種を使っている農家は花巻や北上でも珍しく、他との差別化になっている。
「冬キャベツはほかの人たくさん作ってるんですよ。YR系じゃないのを他の人いっぱいつくってるんで競争にならないようにあえて品種をかえました。」

 さらに肥料は有機肥料を使い農薬を減らす工夫を施している。
「完全堆肥と、うちお米屋さんだから稲、稲のわら裁断したのをいれたり、微生物いれてる。」
 どのような肥料をどのタイミングでどれくらい使うかを決める肥料設計は重要だ。以前はおじいさんがやっていたが、おじいさんが病気になったことから自分で考え始めるようになった。
「肥料設計しはじめたのはね、10年くらい前から。最初はじいちゃんが入れてたんだけど、自分で調べるうちにダブりで入ってたものがあったり、ちょっとずつ自分で研究して。」 

 そして齊藤さんは生産のみならず、販売でも工夫を忘れない。産直の販売所で買い物客がキャベツを買いやすいよう、キャベツの形にぴったり合うサイズの買い物袋をつけて販売したのだ。そうしたところ、うれしいことが起った。
「すぐ冷蔵庫に入れれるように、ジャストサイズの買い物袋に入れて売り出したらば、お客さんが袋のキャベツないですかっていうことになって。そしたらば、袋のキャベツから斎藤さんのキャベツって覚えてもらって。」
 固定客がつくことで春キャベツづくりは軌道に乗った。イチゴに代わる作物として春キャベツを見事に育て上げた。

食べてみたいをつくる
齊藤さんは3年前から「花巻農業女子」に参加している。花巻で農業をしている個性的な女性たちが参加しており、刺激を受けている。
「いろんな野菜をつくるようになったのは農業女子に入ってから。アピールもしやすい。知名度アップになるし。ピーマン系が強い人にはいろんなものを作ってもらって、かぶらないようにつくる。」
 畑違いの作物に手を出すのではなく、それぞれが強い分野の野菜を持ち寄り、情報交換や意見を言い合う。それらの作物でイベントに出店し、自ら販売することで消費者の心理を学び、売れる作物のヒントをつかむ。
また外へ出ることで市内のレストランオーナーなど農家以外の知り合いも増えた。彼らの要望に応じて積極的に新しい作物にも挑戦するようになった。
「食べてみたいって言ってもらったほうが私たちは作りやすいかな。みずみずしいこういうものをやってみたいとかって言ってもらえば、私たちはそれを作る、たとえ少量だろうが。そしてこれ、おもしろかったですねって言ってもらうと、私たちも励みになって作付を倍に増やしたりする。」
齊藤さんは消費者の気持ちをつかもうとする農家だ。その姿勢に私たちは大いに刺激を受け、齊藤さんのハウス棟を後にした。